ルスデランパラサッカースクールの日常

~知的障害・発達障害児における実行機能に関する脳科学的研究~

第Ⅰ部 序論

実行機能

実行機能は、目標を決め、計画し、実際にやってみたときに、どのようになるのか、自分を振り返り、修正しながら目標達成に向かっていくことをいいます。

12歳ごろには、成人と同程度の実行機能に発達します。

人の話を聞く力

実行機能は、学習成績と密接に関わっているのですが、これは、人の話を聞くことにも大きく影響しています。

注意をコントロールすることで、しっかりと話を聞くことが出来る事。

聞いたことを記憶しながら、行動を起こすこと。

これらに必要な、ワーキングメモリ、抑制機能は、子供達の発達と同時に、鍛えることができるのか、調べていきたいと思います。

 

第Ⅱ部 研究1 プランニング

第1章 プランニングに関する先行研究の概観と目的

プランニングとは

プランニングとは、目的を認識し、今までの知識や経験を元に効率的な解決方法を考える心的な動きのことです。プランニングは、年齢が上がっていくにつれて、高度になっていき、12歳以上では、完成期を迎えます。

実行機能の中で、一番最初に行うのが、プランニングだと思いますが、何をやるにしても計画を立てるということを行うことで、経験が積み重なり、次のプランニングに生かすことが出来ます。

何か始める前に、プランニングを実行させる習慣を身につけさせる方法を考える必要があると思いました。

プランニング能力の向上について

プランニングの能力を向上させるための指導するにあたって、成功をイメージできるようになることで、プランニング能力が向上するということがわかりました。

成功のイメージが明確になっていないと、何のために計画をするのかはっきりできないからだと考えました。

レーニングでも、どうすればゴールなのかを明確に提示することが大切だと感じました。そのうえで、プランニングを立てていく能力の向上をできるようにトレーニング内容や指導方法を改善していく必要があると思いました。

小さい子ほど、ゴールまでの道のりを短く、単純にする必要があり、年齢が上がるにつれて、道のりを長く、複雑にしていくようにすれば、徐々にプランニング能力を向上できるのではないかと考えました。

第2章 研究1-1 既有知識を用いる型はめ課題による検討

プランニングが可能な年齢

プランニングについて、6歳であれば、半分以上の子が、行う前に計画を立てれることがわかりました。それだけでなく、2回目行う時には、より慎重に行うことや計画を立てることも出来ることがわかりました。
知識を与えることもひとつですが、経験をさせて、考えることも必要な事のように感じました。

般化・応用の未熟さを補う

知的・発達障害児のプランニングの弱さの要因として、般化・応用の未熟さというものが考えられるそうです。般化は、何か刺激を受けた時に、同じような刺激を受けた時に、同じような反応することを言うのですが、これは、学習においてもとても重要なことで、応用をきかせることに繋がります。このパターンは、前回のパターンに似ているなど、広く応用を聞かせていきます。この力が未熟である場合は、経験のみに任せるのではなく、何らかの指導によってその未熟さを補う必要があるみたいです。
般化・応用の力を育てていくためには、どのようにすればいいのか気になるところですが、知識を増やすことをひとつだと思いますが、ひとつのことから2つ3つと応用していく習慣は、知識を身につけることとは、別のような気がします。

 

第3章 研究1-2 確実性を重視するボールさがし課題による検討

とりあえず目的を達成することを考えてやってみるという傾向にあるわけですが、どうやったら出来るかな。ではなく、どうやったら効率良くできるかなと考えることができるかどうかは、年齢が上がるにつれてできるようになって行くみたいです。
効率良くやるためには、今までの知識や経験を必要としますが、すぐに、知識を与えてしまうと、出来なかった時に、今までの経験を振り返ることや、知識を思い出すという習慣が無くなってしまいます。
また、何度もやるうちに経験が積み重なり、経験が知識となり、効率良く出来るようになっていきます。
コーチとしては、子供たちにとって少しだけ難し課題を与えることや、今までのトレーニングの経験から導き出せる課題を与えることが必要だと思いました。

第4章 研究1-3 規則性を活用する記号の変換課題による検討

本人が筆圧などの筆記能力の未熟さや写書きの困難さが背景にある場合は、プランニングをすることが出来ない。プランニングをしていたとしてもそれらを活用することが出来ないとわかりました。
これは、サッカーでいうと、いくらプランニングが出来ても正確なドリブル、パス、トラップが出来なければプランニングを活かすことが出来ないということになります。プランニングと技術の獲得をバランスよく練習していくことが必要になると感じました。

第5章 研究1-4 推論を活用する宝あて課題による検討

説明を口頭で伝えて理解することはできるということなので、初級の子供達にもトレーニングの説明をすれば、自分たちでできるのだと感じた。最初の体験の子は、理解するのに苦労しているが、練習を重ねていくにつれてトレーニングのやり方を理解するのが早くなっていきます。これは、今までやってきたトレーニングと比較してトレーニングの内容を理解することと、今は説明をしっかり聞かないと、後で自分がトレーニング内容を分からなくて困るということを分かっているから集中して聞くのだと思います。
推論については、正解に導くための最短ルートを質問することで導くということになるので、子供たちが質問してきたことは、全て、答えて最短ルートに導けるようにしたいと思いました。
チームがどこかわからない。というようなコーチの話を聞いていなかった場合の質問は、次からは、しっかりと聞けるように、すぐには答えないようにすることも必要だと思いました。

第6章 研究1のまとめ

プランニングを獲得していく過程で、まずは、やり方を理解することに始まり、とりあえずやりながら考えていくようになります。少しプランニングを用いて、やりながら考えていくようになり、最後にプランニングを用いて実行できるようになるという流れになります。
個人的に思ったのは、知識と経験がないことに取り組むのであれば、やりながら考えるしか無く、周りからの知識を得ながらチャレンジすることで、知識と経験を積み重ねていくようになるというふうに感じます。
もし取り組む事柄に、知識や経験があれば、自分がプランニングを意識する必要もなく、実行する前に、プランニングを行うのではないかと思いました。
プランニングに必要なのは、知識と経験なのではないかと感じました。
しかし、自分がチャレンジして、出来なかったことを、どうしても今の知識と経験では、出来ない時に、指導者が教えるということも1つの方法ですが、試行錯誤的に遂行していくということも1つの力だと思いました。

第Ⅲ部 研究2 注意抑制機能

第1章 注意抑制機能に関する先行研究の概観と目的

注意機能について

注意に関して、ここまで色々な種類の注意があるということは、とても勉強になりました。
選択的注意、分割的注意、持続的注意の3つから成り立っており、所謂、集中力というのがここに当たるのだと思いました。そして、これらはトレーニング可能ということなので、とても読み進めていくのが楽しみです。

注意機能とワーキングメモリ

実行機能には、様々な構成要素があり、そこに含まれるのは、注意機能、ワーキングメモリ、シフティング、抑制機能です。
その中でも、注意機能とワーキングメモリは、相関関係にあることがわかっています。特に、選択的注意によって、必要な情報に注意を向けることで、ワーキングメモリに留めることが出きます。
これに必要なことは、環境の整備と、不必要な情報に注意を向けない抑制機能です。
スクールの練習が始まる前にも、子供たちが興味ありそうな小枝とか、小さなボールとか、公園に転がっているものは、予め処理しておくのですが、これは、注意の分散を防ぐことが出来るみたいです。
抑制機能については、FCの子供たちには特に、リフティング中は、1人でやるようにと話しています。誰かと話したくなったり、集中力が切れても、抑制機能と注意機能の向上のために、リフティングにすぐ集中できるように促しています。
リフティングだけでなく、あらゆるトレーニングで、これらの機能を向上させることが出来ると考えました。

第2章 研究2-1 定型発達児の妨害刺激抑制機能

年齢によって5歳前半から抑制機能を働かせることができるということがわかりました。視覚的妨害刺激抑制機能よりも聴覚的妨害刺激抑制機能の方が獲得が難しく、また、騒音も身近な音になるほど難しくなってくるみたいです。コーチの声に集中して聞くことができるように、聞かなければ困るようなことを話していくことが大切だと思いました。
聞き取る力は、ひとつの音に集中するのではなく、あらゆる音を聞き、そこから必要な音を聞き分け、あとの音を抑制していくことだということです。確かに、音はどうしても耳の中に勝手に入ってきてしまうので、抑え込むために判断していくことが大切だということがわかりました。自分でも何を聞き取る必要があるのか、明確に分かっていないと、抑制機能は、働かないという事だと感じました。

 

第Ⅳ部 研究3 シフティング

第1章 幼児や特別な支援を要する児における実行機能の発達初期特性

シフティングは、ルールを切り替えること指すのですが、これは柔軟性とも似ていると個人的には思いました。ルールが切り替えられた部分を記憶し、行動制御によって、ルールを切り替えていきます。柔軟性は、ここに、自分が変更した方が良いか判断することや、感情を制御することも必要になってくると思いますが、シフティングは、正しい方へ自分をコントロールするという意味でもとても大切な力だと感じました。

第2章 ルールの切り替えを含む課題の処理過程からみた幼児期の実行機能の発達特性

行動を変える方法

シフティングを見ていく中で、主に3箇所、ミスが起きる時があります。
1つ目は、ルールを理解していない時。2つ目は、ルールを理解出来ているが、行動を抑制出来ない時。3つ目は、目標を保持し続けることが出来ない時です。
ルールが理解出来ていないのなら、ルールをもう一度教え、行動を抑制できないのであれば、トレーニングを繰り返し、目標を忘れてしまうのであれば、再び目標を伝え直す必要があると感じました。
子供がどこに問題を抱えているのかを見分けることが大切だと感じました。

記憶に残る工夫が大切

シフティングをする中で、より、ルールを意識するような環境になればなるほど、ルールが切り替わった時にも対応することが出来るということです。個人的に思ったのは、自分で思い出すことが大切なのではないかと感じました。例えば、1対1でボールが相手に取られた時に、取られたことを強く意識することで、記憶に残り、シフティングを行うことが出来るという事だと思いました。フィードバックを周りから貰うことも出来ますが、そうではない時に、自分で出来るような習慣を作ることも大切だと思いました。

言葉に出す重要性

言葉に出しながら、シフティングを行うことで、行動抑制を容易に出来るようになるみたいです。例えば、1対1の練習をしていて、ディフェンスをやる時に、足を出して抜かれたとします。この時に、足を抜かれたから今度は抜かれないようにしようとシフティングを試みる時に、頭で考えるだけなのか、言葉に出してみるのかによってシフティングを行えるのが容易になるということです。
子供たちには、常に言葉に出させることが大切だと感じました。

第4章 研究3のまとめ

自分の行動を変える時には、1.何を変えるのかを明確にし2.変える行動を意識しながら練習し3.行動の習慣が変わるまで練習することが必要になってきます。子供たちを見ていると、2の変える行動を意識しながら練習をするということが難しいようです。どうしても、始める前までは覚えているけど、始まると忘れてしまうみたいです。そこで、言葉に出す、または、言葉に出しながら練習することは、とても意味がある行為だということが証明されているので、とても勉強になりました。

第Ⅴ部 研究4 視空間ワーキングメモリ

第1章 視空間ワーキングメモリと知的障害・発達障害について

ワーキングメモリは、記憶と処理を行うということですが、記憶の容量や、記憶の保持時間、注意の容量は、ある程度決まっているということです。しかし、個人差が大きく、ワーキングメモリは、学習成績と相関性があるということが言われています。ワーキングメモリは、注意のコントロールや抑制に大きく関わってくるみたいです。
確かに子供たちを見ていても、コーチの話を聞けない子には共通点があり、落ち着きのなさや、別事を考えていることを感じます。これはまさに、注意を向けるべき方向に、向けることが出来ていないということになると思います。注意をコントロールすることは、注意をそちらに向かなければ、自分が困るような状況を与えることで、改善されていくと思いますが、注意を向けて、話を聞いていたとしても、イメージすることが出来なければ、記憶には残りにくいのではないかと思いました。イメージするということが、ワーキングメモリの処理することということになると思いますが、これは、プランニングとの関わりである知識と経験を元にイメージを作り出すということなのではないかと考えました。

第2章 研究4-1 小学校特別支援学級における学習活動とワーキングメモリ

この章を読んでいて気になったのが、ワーキングメモリの弱さが、人の話を聞く事や、順序だてて話をすることに直結しているということがわかります。
人の話を聞くということについても、例えばコーチが、子供に向かって、「ゴールの近くにあるボールを取ってきて」とお願いしたとすると、子供は、【ゴールの近くにあるボール】と【ボールを取ってくる】という2つのことに注意を向けなければなりません。【ゴールの近くにあるボール】も、どこのゴールなのか、どのボールなのかということを【ボールを取ってくる】ということを記憶に留めながら行わなければなりません。
ワーキングメモリの強さは、子供に説明したり、お願いしてみると分かるものなのかもしれないと個人的には思いました。

第3章 研究4-2 子どもの視空間性ワーキングメモリの発達特性に関する検討

視空間性ワーキングメモリは、5歳から7歳で発達し始めます。児童期では、言語性ワーキングメモリより視空間性ワーキングメモリの方が、優位に働くため言葉で伝えるよりも、実際に見せた方がいいということがわかりました。視空間性ワーキングメモリは、能動的な視空間性ワーキングメモリと受動的な視空間性ワーキングメモリがあり、試合中に使う視空間性ワーキングメモリは、能動的であり、練習中にコーチの説明を覚えるのは受動的な視空間性ワーキングメモリと言えると思います。練習中でも、能動的な視空間性ワーキングメモリを使えるようになるためには、練習中に、「周りの子を常に観察する習慣を身に付ける」ことや、なるべくゲーム形式を入れることが大切になってくると思いました。

第4章 研究4-3 学習活動につまずきがある児童の視空間性ワーキングメモリに関する検討

視空間性ワーキングメモリとIQには、相関性があり、集中力や、記憶力などに大きく影響してくるみたいです。視空間性ワーキングメモリと注意抑制は、大きく関わりがあるため、そこを今後調べていきたいと思いました。視空間性ワーキングメモリが弱いとつまずきが多くあるみたいで、それについては、個人差があり、個人的に思ったのは、IQの高さは、つまずきの少なさでもあるのかなぁと感じました。

第5章 研究4のまとめ

視空間性ワーキングメモリは、実行機能の中でも、特に重要な役割を感じました。シフティングを行う中で、必要なことは、3つあります。
①行動を変える内容を理解していること。
②行動を変える内容を忘れずに意識しながら繰り返せること。
③行動を変えれるまで繰り返せること。
このうちの①と②は、視空間性ワーキングメモリが重要になってくると個人的には、思いました。
視空間性ワーキングメモリの大元ととなっているのは、注意抑制にあると思うので、ここのトレーニング方法を調べていくことが課題であり、実行機能を鍛えていく上で、1番最初にやるべき事だと思いました。

第Ⅵ部 研究5 展望記憶

第1章 展望記憶と知的障害・発達障害について

展望記憶は、行うべき行為を記憶し、行うべき時に思い出し、行うことが出来ることです。これは、プランニングと大きく関係があると言えます。プランニングの時点で、どれだけそのイメージを脳裏に記憶することが出来るか、この時点で、長期記憶まで持っていかなければならないため、何度もこれを思い出すことが必要になると思います。シフティングにおける、行動を変える内容を覚えていられない子というのは、このプランニングがしっかりと出来ないからと言えるかもしれません。しかし、ここでいう思い出すということは、回想記憶という部類で、展望記憶は、記憶してからある一定の時間をおいた事柄というふうになるみたいです。展望記憶に必要なのは、チームに来たら何をするかとか、スクールに来たら何をするかということを覚えていられるかということになります。ビブスを片付ける時に畳んで片付けることが出来るか。これも1つの展望記憶です。こういうことを1つずつできるようにトレーニングして行くのも大切だと思いました。回想記憶の必要性も感じたので調べていきたいと思います。

 

展望記憶は、行うべき行為を記憶し、行うべき時に思い出し、行うことが出来ることです。これは、プランニングと大きく関係があると言えます。プランニングの時点で、どれだけそのイメージを脳裏に記憶することが出来るか、この時点で、長期記憶まで持っていかなければならないため、何度もこれを思い出すことが必要になると思います。シフティングにおける、行動を変える内容を覚えていられない子というのは、このプランニングがしっかりと出来ないからと言えるかもしれません。しかし、ここでいう思い出すということは、回想記憶という部類で、展望記憶は、記憶してからある一定の時間をおいた事柄というふうになるみたいです。展望記憶に必要なのは、チームに来たら何をするかとか、スクールに来たら何をするかということを覚えていられるかということになります。ビブスを片付ける時に畳んで片付けることが出来るか。これも1つの展望記憶です。こういうことを1つずつできるようにトレーニングして行くのも大切だと思いました。回想記憶の必要性も感じたので調べていきたいと思います。

第2章 研究5-1 定型発達児における展望記憶

展望記憶は、プランニングと大きく影響があるみたいです。ある時に、ある事をする。ということをプランニングの段階で、符号化し、思い出すと言う必要があります。これは、誰かに補助されて身につくものではなく、自分で考えて身につけていくしかないように感じます。現に、小学生になれば、自分でプランニングし、展望記憶を行っていく機会が増え、プランニングの力も身についていきます。自分でやる。ということ自体が、展望記憶を使っていることに繋がっていくように感じました。

第4章 研究5のまとめ

未来にやることを覚えておく、というのは、自分に興味があることや、自分が困ること等、自分事で考えることが出来ていないと、展望記憶は、とても難しいものだと感じました。

感想

 実行機能について、どのような仕組みになっているのかとても気になっていたので、この本で、概要はつかめてよかったと思いました。

実行機能は、目標達成まで計画し、実行し、改善し、目標を達成していく力ということで、そのためにも何に注意を集中し、必要のない注意を抑制していくのか。また、ワーキングメモリによって、記憶と処理を行い、注意を向けたものに対して自分の目標達成のための素材にしていく。それらの素材を使って、シフティング、つまり、自分の行動を変え、プランニングによって、今までの知識や経験を活用し、展望記憶によって、いつ自分が何をやるのかを計画していきます。これらすべて、ひとつひとつの質が大切なのであって、全てが出来ているというよりも、どこまでも質を高めていく必要があるものだと感じました。この中でも、特に一番大切になってくるのは、個人的には、注意抑制なのかなぁという気がしました。自分の必要なことに注意を向けることが出来なければ、スタートの位置に付くことが出来ないと感じました。